中絶手術を検討している方の中には、術後の健康状態を心配する人もたくさんいます。確かに、「中絶手術のせいで病気になりやすくなるのでは?」といった不安はもっともです。
しかし、中絶手術後の身体の変化について正しく知ることでリスクを大きく抑えることができます。まずはこの記事で、術後の正常な経過と注意すべきサインを確認しましょう。
中絶後になりやすい病気・合併症
人工妊娠中絶手術後に、高い確率でかかりやすい病気や合併症はありません。現代の人工妊娠中絶は適切な管理下で行われる、高い安全性が確保された手術だからです。
日本産婦人科医会の調査によると、妊娠12週未満の初期中絶における合併症の発生率は約0.14%〜0.3%と報告されています。さらに、命に関わるような重症感染症(敗血症など)に至る確率は0.004%と、極めて低い数値です。
このように病気になる確率は非常に低いですが、万が一のサインを早く見つけるために、知っておきたい病気・合併症について解説します。
感染症(子宮内膜炎・骨盤腹膜炎)
手術後、一時的に身体の抵抗力が落ちている際に、腟内の細菌が子宮内に入り込んで炎症を起こすことがあります。これが子宮内膜炎や骨盤腹膜炎につながります。
主な症状:38℃以上の発熱、鎮痛剤が効かないような強い腹痛、悪臭のするおりもの
予防のために:当院で処方する抗生剤(菌を殺すお薬)を、指示通り最後まで飲み切ることが何より大切です。また、術後2週間ほどはシャワーのみにし、湯船に浸かるのを控えるなど、清潔な生活を心がけましょう。
子宮内遺残
胎盤などの妊娠組織の一部が、子宮内に残ってしまう状態です。術後の大量出血の原因になったりすることがあります。
当院の取り組み:子宮内膜を傷つけにくい「吸引法(MVA)」にて、超音波で状態を確認しながら丁寧に処置を行うことで、組織の取り残しリスクを抑えます。また、術後の検診で子宮の中がきれいになっているかをしっかり確認します。
子宮収縮不全(子宮復古不全)
手術後、大きくなっていた子宮が収縮することで元のサイズに戻り、同時に出血を止めていきます。この収縮する力が弱くなってしまう状態を「子宮収縮不全」といいます。
症状と対策:出血がダラダラと長引く原因になります。当院では子宮の収縮を助けるお薬を処方します。お薬を飲み、無理な運動を控えて安静に過ごすことで、多くの場合スムーズに回復へと向かいます。
アッシャーマン症候群(子宮内の癒着)
手術の際に子宮の内側が傷つき、壁同士がくっついて(癒着して)しまう珍しい疾患です。進行すると月経が止まったり、不妊の原因になったりすることが懸念されます。
しかし、現在主流となっている「吸引法」は、子宮内膜を過度に傷つけるリスクが非常に低く、それに伴いアッシャーマン症候群の危険性も大きく低下しているのでご安心ください。
中絶後に起こりやすい症状や身体の変化
中絶手術の直後は、身体にさまざまな変化が現れます。体調不良が続くと「何か悪い病気では?」と不安になるかもしれませんが、多くの場合、身体が元の状態へ戻ろうとしている「正常な回復反応」です。
また、症状は一時的なもので、お薬などで十分にコントロール可能なので、ご安心ください。
腹痛
手術が終わると、妊娠によって大きくなっていた子宮がギュッと収縮し、元のサイズに戻ろうとし始めます。これを「子宮復古(しきゅうふっこ)」と呼びます。この過程で、腹痛を感じるケースがあります。
| 症状の目安 | 生理痛のような「重だるい鈍痛」を感じるのが一般的です。 |
|---|---|
| 期間 | 手術当日から数日がピークで、通常は1週間程度で自然に軽快していきます。 |
| 過ごし方 | 痛みがつらいときは無理をせず、処方された痛み止めを服用してください。お腹を温めてゆっくり休むことも回復を助けます。 |
出血(悪露:おろ)
手術後はしばらくの間、子宮内に残った血液や組織が外へと排出されます。これは分娩後の「悪露(おろ)」と同じ生体反応で、決して異常なことではありません。
| 出血の傾向 | 術後すぐに出る方もいれば、数日経ってから始まる方もいます。 |
|---|---|
| 量と状態 | 出血量にはかなり個人差があります。「おりものに少し血が混ざる程度」の人もいれば、一時的に「鮮血」が出たり、「レバーのような小さな血の塊」が混ざったりすることもあります。 |
| 期間 | 一般的に1〜2週間かけて、少しずつ色が薄くなり、量も減っていきます。 |
吐き気・嘔吐(麻酔の影響)
当院では手術中、眠っている間に処置が終わる「静脈麻酔」を使用します。手術直後に感じる吐き気や気持ち悪さは、この麻酔による一時的な副作用であることがほとんどです。
| 経過 | 麻酔が切れていくとともに、自然に改善していきますので過度な心配は不要です。 |
|---|---|
| 軽減する方法 | 術前に指定された「絶飲食の時間」をしっかり守っていただくことで、吐き気のリスクを抑えることができます。 |
めまい・頭痛(麻酔や体調の変化)
手術当日、麻酔から覚めたあとに「ふわふわする」「頭がズキズキする」と感じることがあります。これも麻酔の影響や、緊張が解けたことによる一時的な体調の変化です。
| 回復までの時間 | 通常は覚醒から30分〜数時間程度でおさまります。 |
|---|---|
| 当院のサポート | 患者様の安全を第一に考え、術後はプライバシーに配慮した回復室にて1〜2時間ほどお休みいただいております。医療スタッフがそばで経過を見守り、ふらつきなどが落ち着いたことを確認してからご帰宅いただきます。 |
術後のメンタルへの影響:中絶後遺症候群(PAS)とは?
中絶手術のあと、「涙が止まらない」「どうしても自分を責めてしまう」と、心がつらくなってしまう方がいらっしゃいます。こうした精神的な不調は、決してあなたの性格が弱いからでも、あなたのせいでもありません。
中絶手術後は、妊娠を維持するための女性ホルモンが急激に減少します。この劇的な「ホルモンバランスの変化」に、手術に伴う「精神的ストレス」が重なることで、メンタルに影響が現れます。実際、手術後のメンタル不調は「中絶後遺症候群(PAS)」という名称も付いているほど、誰の心にも起こりうる自然な反応なのです。
日本産婦人科医会の調査でも、中絶を経験された方の約8割が「つらい経験だった」と感じていることがわかっています。今のつらさは、あなたがそれだけ一生懸命に向き合った証でもあります。自分を責めすぎず、まずはその感情をそのまま受け止めてあげてください。
※参考:人工妊娠中絶をお考えの患者さん向けリーフレット|日本産婦人科医会
PASの主な症状と心のケア
中絶後遺症候群(PAS)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種と考えられており、以下のような症状が現れることがあります。
- ・手術の光景がふとした瞬間に蘇る(フラッシュバック)
- ・強い罪悪感
- ・眠れない
- ・子供や赤ちゃんを見るのがつらい
- ・感情が麻痺したように何も感じなくなる
これらの症状は特別なことではなく、誰でも起こりえます。
もし、日々の生活がままならないほどつらい状態が続くなら、一人で抱え込まないでください。まずはクリニックへお話しいただくことが、心の回復への大切な一歩となります。
【セルフチェック】受診すべき「異常」のサイン
術後の経過には個人差がありますが、「これは正常かな?」「病院に行くべき?」と迷ったときの判断基準をまとめました。サインを事前に知っておくことで、万が一の際にも落ち着いて対応でき、安心感につながります。
すぐに病院に行くべき症状
以下の症状がある場合は、感染症や子宮内のトラブルの可能性があるため、すぐにご連絡ください。
- □ 出血:生理2日目よりも多い出血が続いている、またはテニスボールのような巨大な血の塊が何度も出る。
- □ 腹痛:処方された痛み止めを飲んでも動けないほどの激痛がある。
- □ 発熱:38℃以上の高熱が出た。
- □ その他:おりものから今までにない不快な臭いがする。
少しでも「いつもと違う」「不安で仕方ない」と感じる場合は、遠慮なくいつでも当院へご相談ください。
正常な回復の範囲内(様子を見て良い症状)
以下の症状は、身体が順調に回復しているサイン、あるいは麻酔による一時的な影響なので、まずは安静にして様子を見ても大丈夫です。
- □ 軽い生理痛のような鈍痛:子宮が元の大きさに戻ろうとしている証拠(子宮復古)です。
- □ 少量の出血(悪露):1〜2週間ほど、ダラダラと続くことがありますが、徐々に減っていけば問題ありません。
- □ ふらつき・記憶の曖昧さ:麻酔による一時的な影響です。数時間から当日中には落ち着きます。
上記の症状があってもご不安なことがあれば、どんな些細なことであっても当院へご相談ください。
中絶手術後の病気を防ぐための正しい過ごし方
術後の身体は非常にデリケートです。感染症などのトラブルを防ぎ、一日も早く回復するために、以下の目安を守って安静に過ごしましょう。
※回復期間や術後の症状には個人差があるため、必ず医師の指示に従ってください。
| 安静期間 (術後2〜3日) |
手術当日と翌日は心身ともにリラックスしてください。 数日は重労働や長時間の外出を避け、可能であれば仕事も休みましょう。 「動ける」と感じても内部の傷口は修復中のため、休養が必要です。 |
|---|---|
| 入浴の制限 (術後1〜2週間) |
医師の許可が出るまではシャワーのみにしてください。 術後は子宮の入り口が開いており、湯船に浸かると雑菌が入りやすく、子宮内膜炎などの感染症を引き起こすリスクがあるためです。 |
| 飲酒・激しい運動 (術後1〜2週間) |
飲酒や激しい運動は控えましょう。 アルコールや運動は血管を拡張させ、止まりかけていた出血が増えたり、貧血を招いたりする恐れがあります。 |
| 性交流 (最初の生理まで) |
子宮の回復のため、最初の生理までは控えましょう。術後は感染症のリスクが高いだけでなく、排卵周期が乱れているため、思いがけない時期に再び妊娠してしまう可能性が高いです。 中絶手術を繰り返さないために、避妊を徹底しましょう。 |
天神駅前婦人科クリニックはアフターケアも徹底
「中絶手術をしたことで、病気になったらどうしよう…」そのような不安を抱えて、お一人で悩んでいませんか?
天神駅前婦人科クリニックでは、手術そのものを安全に行うことはもちろん、術後のアフターケアこそが患者様のこれからの人生を守るために不可欠であると考えています。
そのため、以下の2点を重要視しています。
心身のサポート:術後の検診では、エコー検査で子宮の回復を丁寧に確認するだけでなく、お気持ちの変化についても安心してお話しいただける環境を整えています。
アフターケアの徹底:術後、万が一熱が出たり出血が気になったりした際には、すぐにご相談いただける体制を整えています。
あなたが前を向き、心も身体も健やかに次のステップへ進めるよう、最後まで誠実に、優しく寄り添い続けます。どんな小さな不安でも、どうぞ安心してお聞かせくださいね。
よくある質問(FAQ)
- 中絶後に性格が変わることはありますか?
- A. 性格そのものが変わるわけではありませんが、術後の急激なホルモンバランスの変化や心理的ストレスにより、一時的に無気力になったり、攻撃的になったりすることがあります。これらは心身の回復過程で起こりうる自然な反応です。
- 中絶後は太りやすいと聞きましたが本当ですか?
- A. 医学的に「中絶=太る」という根拠はありません。ただし、術後の安静による運動不足や、ストレスによる過食、ホルモンバランスの乱れによるむくみが生じることはあります。体調が戻れば徐々に元の状態へ回復していきます。
- 中絶後から精神的に不安定です。いつまで続きますか?
- A. 術後数日から数週間はホルモンの影響で情緒不安定になりやすい時期です。多くは1か月程度で生理の再開とともに落ち着きますが、涙が止まらない等の強い症状が続く場合は、一人で抱えずお早めに当院へご相談ください。
- 中絶後に不妊にならないか心配です。
- A. 適切な環境で手術を受ければ、一度の中絶で不妊になる可能性は極めて低いです。現在は子宮を傷つけにくい「吸引法」が主流であり、術後の適切なケアと検診を欠かさなければ、将来の妊娠への影響を過度に心配する必要はありません。ご安心ください。
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2025/11/06
【年末年始の営業に関して】 12/31~1/3は休診とさせていただきます。 変更によりご不便をおかけしますが、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
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2025/10/21
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